この世の果てまで、小説を持って。 私の心をどんな色にも染めてくれる小説。どんな世界でも見せてくれます。

遅かりし!

たまに電車を乗り過ごしてしまうことがあります。その原因は、読書に夢中になっていたから。もしくは、すぐに乗り換えないといけないのに、何を思ったのか全くの勘違いをしてしまったから、などです。そうそう、もう随分前になりますけど、ついつい寝てしまって気づいた時にはどこにいるのかさえわからない、なんてこともありました。さすがにコレは最近はありません。あまり眠くならなくなったんです。そのぶん、周りの寝ている人がかなり気になりますけどね。もたれかかられることも多いですし。
でも、先日見かけた人は、なんと『乗り忘れ』です。電車が来たのに、駅の待合室のイスに腰かけたまま本を読み続けていたんです。私が待合室に入ったときに思ったのは、すごく読書に熱中している人がいるなっていうことです。その学生らしき男性が本当に集中しているのがわかりました。けど、そこは駅のホームです。当然、来た電車に乗ると思うじゃないですか。でも、周りの人たちが立ち上がって移動したのに、彼は身動きしませんでした。「まさか」と思ったんだけど、誰かと待ち合わせしているのかもしれないし、もっと遅い時間の電車を待っていて時間をつぶしているのかもしれません。気にしながら私は彼を見ていました。そしたら、その男性が急にパッと立ち上がったのが見えたんです。でも、遅かりし。すでにドアは閉まっていました。
やっぱり声を掛けてあげたら良かったなぁ。そう思ったけど、私も『遅かりし』でした。

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