この世の果てまで、小説を持って。 私の心をどんな色にも染めてくれる小説。どんな世界でも見せてくれます。

電車で見かけた高校生

仕事帰りの電車はなかなか座れません。運よく自分が立っている前の席の人が途中の駅で降りたら、ツイてるって座れるんですけどね。先日も乗ったときには席がいっぱいで案の定立つことになりました。まぁ、いつものことだからなんとも思わないで目の前の広告を見ていました。立っている間は揺れに耐えられないから読書は諦めています。図書カードの広告を何とはなしにずーっと眺めていました。乗った時からドアの近くに一人の男の子が立っているのは私の視界に入っていました。ジュースを飲みながらスマホを触っていて、別段変わったことのない普通の高校生。上下ブルーのジャージ姿で、運動部だということがわかるくらいでした。特に気にしてなかったんだけど、次にチラッと視線を送った瞬間に二度見してしまいました。さっきと違って文庫本を読んでいたんです。それも左手だけで本を持って。そのうえ時々、ジャージのポケットからスマホを取り出してメールかLINEを右手だけでササッと打ってるんです。男子高校生が活字を読んでる姿がすごく新鮮でした。それもバリバリ運動部の子が。ジャージをよく見たら、フットボールクラブって書いてありました。へぇ、フットボールかぁって。ただ、それがどんなスポーツだったかが思い浮かばなかったけど。さらに驚いたのは電車は結構揺れているのに、彼がまったく揺れないこと。澄ました顔で片手で本を読んでるんです。スポーツをしてるから体幹の鍛え方が違うんだなって感心しちゃいました。駅に着いたら本をスポーツバッグにサッと入れて、ジュースを飲みながら降りて行きました。また、普通の高校生に戻って。私はずーっと立ちっぱなしでツイてなかったんだけど、その新鮮な光景にこっちまで爽やかな気持ちになれて、逆に座れなかったことがツイてたって思えてしまいました。

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