近所にある小さな本屋さんを訪れた日のことです。もうかれこれ十年以上前からファンであったマンガ家が手掛けた新作が棚に並んでいました。この方は今まで数えるほどしか著書を発表していないこともあり、それを見つけた時はとても嬉しくて、すぐさまレジへ向かったのでした。
帰宅後、本の帯にふと目をやると「追悼」と書かれており、この二文字を見つけた瞬間、著者がこの世を去ったことを知ったのでした。この漫画家の作品に初めて出会ってから長い月日は経ており、落ち込んでいる時、楽しい時、一日が終わり深い眠りに着く前など、私の心をいつも穏やかなものにしてくれたことを思い出します。そのためとても切なくて、何だか寂しくて、その作品をなかなか読む事が出来ずにおり、同時に「さよなら」の意を込めてじっくりと丁寧に読もうという気持ちも胸に宿っているのです。
近々心地よく晴れた休日の午後にでも、読んでみようかと思っております。なぜなら今まで手にしてきた作品は、どれも穏やかな休日を彷彿とさせるストーリーだったからです。何気ない暮らしをとても丁寧に描き、生きることの幸せを感じさせてくれた著書達は、これからもずっと私の心に刻まれ続けることでしょう。購入したあの一冊の本は、感謝の気持ちを込めて大切に心に刻もうと考えております。