この世の果てまで、小説を持って。 私の心をどんな色にも染めてくれる小説。どんな世界でも見せてくれます。

母の友人と

数年前の初夏のことです。たまには歩こうと徒歩で書店に向かっている途中、前方からどこかで見たような顔の女性が歩いてくるのが見えました。「全く知らないという人ではないはず、でもどこで会ったんだろう……?」と脳内を検索すること数秒、何とか彼女とすれ違う前に思い出すことが出来ました。
彼女は、母の古い友人でした。昔から私をかわいがってくれて、我が家にもよく遊びに来ていたんです。「あの、もしかして」と声を掛けると、彼女は不審そうな顔をしていました。その日の私はすっぴんに日焼止めを塗っただけ(散歩ついでに小説を買いに行くだけだから良いかなと思って……)、そしてその頃流行り始めていたとある伝染性の病気予防でマスクをしていましたから、無理もないことだと思います。
マスクを外すとやっと私だと分かってもらえたようで、その口元がほっとほころびました。とても懐かしい気持ちになりました。優しい笑顔は昔のままでした。2、3立ち話をさせてもらうと、母とは今でも電話で連絡を取っているものの、彼女の方の家庭の事情でなかなか遊びに行けなくなっているとのことでした。
帰宅後、母にこの話をすると、どこかうれしそうにしていました。「多分、もうそろそろ会えるわよ」。私もその日が楽しみです。

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